─症例報告─
糖尿病性ケトアシドーシスに併発した多臓器不全の治療中にムーコルと緑膿菌による多発肝膿瘍,胃蜂窩織炎,横隔膜下膿瘍を合併した2歳児例
花澤 幸利1), 岡田 広1)
1)松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科
生来健康な2歳女児.初発の糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)で入院し,入院2日目から多臓器不全が急速に進行し,静脈-動脈体外式膜型人工肺(VA- ECMO)や人工呼吸器などの集学的治療を要した.入院19日目に腹水の増加を認め,麻痺性イレウスおよび消化管出血をきたした.入院21日目に造影CTで多発肝膿瘍,胃蜂窩織炎,多量胸腹水を認めた.肝膿瘍・胸腹水のドレナージを行うも,血液,胸水,腹水,肝膿瘍の培養はすべて陰性であった.さらに腹部MRIで横隔膜下膿瘍の併発が判明した.入院51日目に腹腔鏡下膿瘍ドレナージ術を施行し,得られた検体を培養検査と同時に遺伝子解析にも提出した.培養検査に先行して遺伝子解析によりムーコル(Rhizopus microsporus)と緑膿菌が検出されたことから,入院58日目に抗菌薬をピペラシリンに変更し,抗真菌薬としてアムホテリシンBリポソーム製剤を開始した.1型糖尿病を背景に,DKA治療中に続発性の消化管ムーコル症・細菌感染症を発症したと考えられた.小児の初発DKAにムーコル症を合併した本症例は,本邦では報告例のない稀少な症例であり,起因菌同定に遺伝子解析などの検索が非常に有用であった.
| Key words | ムーコル症,多発肝膿瘍,胃蜂窩織炎,1型糖尿病,糖尿病性ケトアシドーシス |
|---|---|
| 連絡先 | 花澤幸利 〒270-2296 松戸市千駄堀 993-1 松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科 |
| 受付日 | 2025年11月22日 |
| 受理日 | 2026年2月15日 |
小児感染免疫 38 (2):137─143,2026
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