機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─追悼─

宮田曠先生を偲んで

森口 直彦

市立貝塚病院小児科


令和5年10月18日に宮田 曠先生が逝去されました.享年86歳でした.
宮田先生は昭和39年に大阪大学医学部を卒業後大阪大学小児科学教室に入局し,小児科医として研鑽を積まれ,小児腎臓病学,感染免疫学の分野を専門領域とされました.その後,昭和50年に新設された近畿大学医学部に小児科学教室助教授として赴任され,初代教授の牧 淳先生とともに小児科学教室の立ち上げに大変な努力をされ,他大学から来られた若い先生方,近畿大学医学部卒業生など多くの後進の指導に中心になって当たられました.研究面では,尿路感染症起炎大腸菌や尿蛋白の解析,顆粒白血球機能などの研究を続けられ,平成11年からは近畿大学医学部堺病院小児科の教授に赴任されました.日本小児感染症学会では運営委員などの要職を務められ,学会の発展に多大な貢献をされました.
私が小児科学教室に入局したのは昭和57年ですが,その当時から宮田先生は,「尿路感染症を惹起する大腸菌は,消化管内の大腸菌と異なる特殊な株ではないか?」という考えを持っておられ,私自身も尿路感染症起炎大腸菌の諸抗原と生体の免疫反応との関連をテーマとして与えられて,直接に研究指導していただきました.その後の研究で,大腸菌のP-繊毛をはじめとする接着因子やα-ヘモリジンなどの組織障害因子と尿路感染症との関連,尿路感染症起炎大腸菌のリポポリサッカライドなどの内因子,外毒素による局所での炎症反応や組織障害性について多くの業績を発表され,「尿路感染症を惹起する大腸菌は限られた種々の接着因子や組織障害因子を保有した特殊な株である,これらの病原因子の一部は普通の大腸菌がbacteriophageなどを介して遺伝子を獲得したかもしれない」ことまでわかるようになりました.さらに宮田先生は,尿路感染症起炎菌の抗菌薬耐性化が問題になる中,「今後は,発想を転換してこのbacteriophageを使った尿路感染症起炎菌の治療も試みてはどうか」とも言われていました.その後,宮田先生は定年を迎えられ,私自身も大学を離れたため研究の実現に至りませんでしたが,近年ファージセラピーが注目されているのをみると,その見識に敬服する思いでいます.
宮田先生は研究・臨床については常に真剣で厳しい態度で臨んでおられましたが,決して上から押し付ける指導ではなく,若手が提案した方針にも真摯な態度で向き合われ,実現に向けて多くのサポートをされていました.一方,日ごろは大変温厚な人柄で,医局の若い先生方とも気さくな態度で話をされ,学会の発表の後には宮田先生を囲んで酒宴,食事会など楽しい時間を過ごさせていただいたことを思い出します.
平成18年3月に近畿大学堺病院を定年退職された後はお話をする機会は減ってしまいましたが,その後も学会場に来られた時には笑顔で声をかけていただき,小児感染症の現状についていろいろ質問をされていました.ここ数年前から体調がすぐれないことはお聞きしていましたが,また回復されてお会いすることを楽しみにしていましたので,訃報に接した時は驚きを禁じえませんでした.
宮田先生の研究・臨床に対する前向きな姿勢は常に私たちの手本であり,長年のご指導に対して感謝の念に堪えません.先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます.

小児感染免疫 36 (3):277─279,2024

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