─原著─
COVID-19流行下に当院に入院した小児,新生児およびその母親における百日咳抗体価の検討
北野 太一1), 大石 智洋1, 2), 近藤 篤史1), 井上 智貴1), 加藤 敦1), 田中 孝明1), 中野 貴司1)
1)川崎医科大学小児科学 2)同 臨床感染症学
わが国のワクチンによる予防を含めた今後の百日咳対策に役立てることを目的に,COVID-19流行下において,当院小児科入院児104人,NICU入院新生児28人およびその母親26人を対象に,百日咳抗PT抗体価および抗FHA抗体価の検討を行った。抗PT抗体と抗FHA抗体の保有率(10EU/mL以上)は,それぞれ生後6〜11か月で81.8%および91.0%と高値であり,5〜9歳で42.1%および57.9%と低値であったが,10〜19歳で72.7%および86.4%と高かった。百日せきジフテリア破傷風混合(DPT)ワクチン4回接種済みの児では抗PT抗体保有率が33.8%,抗FHA抗体保有率が21.8%と低値であった。新生児とその母親では,抗PT抗体と抗FHA抗体の保有率がそれぞれ新生児で46.4%および39.2%,母親で53.8%および38.4%で,臍帯血幾何平均抗体価/母親血幾何平均抗体価の比は,抗PT抗体0.86,抗FHA抗体1.16であった。抗体保有率の年齢による推移は,既報と同等であったが,臍帯血幾何平均抗PT抗体価/母親血幾何平均抗PT抗体価の比の低値(<1.0)は既報と異なっていた。COVID-19の5類移行に伴う感染対策緩和によって今後の百日咳罹患者数増加が予想され,小児科病棟やNICUでの院内感染防止のためにも,抗体価調査を継続する予定である。
Key words | 百日咳,抗体価,新生児,小児,母親 |
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連絡先 | 北野太一 〒701-0114 倉敷市松島577 川崎医科大学小児科学 |
受付日 | 2024年2月10日 |
受理日 | 2024年8月7日 |
小児感染免疫 36 (3):249─257,2024
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