─原著─
FilmArray髄膜炎・脳炎パネルが有用であったヒトパレコウイルス中枢神経感染症の集積
和田 尚一郎1), 笠井 正志2), 松井 佑一朗3), 谷本 佳彦4), 大山 み乃り4), 森 愛4), 相澤 悠太5), 山口 善道1), 濱畑 啓悟3), 松原 康策1)
1)神戸市立西神戸医療センター小児科 2)兵庫県立こども病院感染症内科 3)神戸市立医療センター中央市民病院小児科 4)神戸市健康局保健所健康科学研究所感染症部 5)新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野
ヒトパレコウイルス(HPeV)は,乳幼児に中枢神経感染症を起こす病原体であるが,発症しても脳脊髄液検査で細胞増多をほとんど認めず,従来その診断は困難であった.近年多項目病原体遺伝子関連検査が利用可能になった.本研究は2023年7〜9月にFilmArray髄膜炎/脳炎パネル(FA-ME)を用いて神戸市内の入院施設でHPeV髄膜炎・脳炎と診断した16症例の臨床像を記述するとともに,FA-MEの有用性を検討した.対象児の発症日齢は中央値32(全例生後3か月未満)で,全例高熱と高度な頻脈を伴う敗血症を呈した.全例,脳脊髄液の細胞数や蛋白・糖はいずれも正常範囲内であり,血清C反応性蛋白の上昇を認めなかった.全例,第3入院病日以内にFA-MEでHPeVが検出され迅速な診断が可能であった.第1例目の発症情報は地域のメーリングリストを通じて共有され,他症例の早期診断に結びついた.16例のHPeV感染症は,地理的・時間的近接性を認め,後のウイルス学的検査ですべてHPeV3型と確認し,かつ高い遺伝子配列の相同性を認めたことから,兵庫県南部でのエピデミックと判明した.FA-MEは乳児期早期のHPeV中枢神経感染症の迅速かつ正確な診断に有用であり,地域での流行状況の効率的な共有に寄与した.
Key words | ヒトパレコウイルス,無菌性髄膜炎,脳炎,多項目病原体遺伝子検査,エピデミック |
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連絡先 | 松原康策 〒651-2273 神戸市西区糀台5丁目7番地1 神戸市立西神戸医療センター小児科 |
受付日 | 2024年5月3日 |
受理日 | 2024年7月9日 |
小児感染免疫 36 (3):233─243,2024
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