─提言─
小児感染症認定指導医(専門医)制度のさらなる発展を目指して
西屋 克己
小児感染症専門医検討委員会委員長/関西医科大学教育センター
日本小児感染症学会の認定指導医(専門医)制度は,小児感染症およびそれに関連する小児の免疫に関する臨床医学の健全な発展普及を促し,小児に対する優れた総合診療能力を土台としながら,小児感染症診療の知識と実践に優れた医師を育成することを目的とし,小児専門医療施設や大学病院などで,小児感染症の専門家として活動し,日本における小児科領域の感染症診療水準の向上を目指すものとして制定されました.本制度は2017年から施行され,2020年度に第1回小児感染症認定指導医(専門医)試験が実施されました.現在,プログラム制による認定が17名,暫定指導医からの認定が52名,合計69名の小児感染症認定指導医(専門医)が日本の小児専門医療施設や大学病院などで活躍されています.2025年度には第1回の更新年度をむかえ,いよいよ制度として一巡することとなります.
小児科外来を訪れるお子さんのほとんどは感染症であり,小児科医は小児感染症の見識を持つことは必須です.しかし,長らく小児感染症学を系統的に学ぶことができる標準化されたプログラムは本邦にはありませんでした.そのような状況の中で,海外で小児感染症学を学んだ先生方が中心となり,認定指導医(専門医)制度の構築につとめられ,現在の制度が完成しました.そのような状況の中で,第2世代,第3世代の中堅,若手の認定指導医(専門医)が誕生し,小児感染症学の教育の輪を広めていただいています.しかし,まだまだその数は不足しており,地域間格差もあり,日本の主要な小児医療機関に小児感染症認定指導医(専門医)が常駐している状況ではありません.一方,内科領域では,感染症学は専門医機構から独立した1分野として認定されており,卒前教育においても系統的に感染症学を学ぶ機会があり,医育機関には日本感染症学会専門医が常駐する状況となっています.
今,医学教育は卒前・卒後教育のシームレス化が重要な課題となっており,これは小児医学教育においても同様です.小児科領域では,卒前の臨床講義や参加型臨床実習,そして卒後初期研修まで小児科を学ぶことが必須となっています.こうした枠組みの中で,卒前教育から初期研修,そして小児科専攻医教育,さらには病院における小児感染症診療や感染制御などを一貫して実践できる小児感染症認定指導医(専門医)の存在は極めて重要です.そのためには,大学小児科チェアパーソンや子ども病院院長など小児医学教育や小児医療のステークホルダーの先生方に小児感染症認定指導医(専門医)の意義をご理解いただき,その育成にご協力いただくことは不可欠です.学会内だけではなく,外に向けた小児感染症認定指導医(専門医)制度の啓発活動を行っていき,小児感染症認定指導医(専門医)制度のさらなる発展を目指していきたいと考えています.
小児感染免疫 36 (3):231─232,2024
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