機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

抗百日咳菌IgM 抗体陽性のため百日咳と診断されたが,後に偽陽性と考えられた4 歳児例

西村 直人1), 西村 直子1), 梅原 舞1), 赤野 琢也1), 安藤 拓摩1), 後藤 研誠1), 竹本 康二1), 尾崎 隆男1)

1)江南厚生病院こども医療センター


百日咳の確定診断には臨床診断ではなく検査診断が求められている.検査診断法には百日咳菌の分離または核酸検出という病原体検査と血清の抗体検査があり,抗体検査の一つに抗百日咳菌IgM抗体がある.症例はDPT-IPV 4回既接種の4歳女児.9日前から咳が続いているため当院を受診した.第9病日の百日咳菌の分離およびDNA検出はともに陰性であったが,抗PT-IgG抗体8EU/mL(−),抗百日咳菌IgM抗体13.9NTU(+),抗百日咳菌IgA抗体1.0NTU(−)であり,IgM抗体陽性によって百日咳と診断された.その6か月後に再び強い咳を訴えて当院を受診し,第4病日の鼻腔ぬぐい液から百日咳菌DNAが検出され,百日咳と確定診断された.第4/20病日の抗PT-IgG抗体11(+)/ 140(+)EU/mL,抗百日咳菌IgM抗体11.0(±)/ 15.9(+)NTU,抗百日咳菌IgA抗体1.8(−)/ 7.7(−)NTUであり,抗PT-IgG抗体の有意上昇と抗百日咳菌IgM抗体の陽転が確認された.ペア血清では抗体検査の検査診断基準を満たしているが,第4病日の血清のみでは満たさなかった.前回の単一血清の抗百日咳菌IgM抗体陽性による百日咳の診断は誤りで,IgM抗体は偽陽性の可能性が考えられた.百日咳の確定診断のためには病日を考慮した検査診断法の選択と結果の解釈が重要であり,IgM抗体偽陽性のリスクを認識することが必要である.

Key words 百日咳,百日咳菌IgM 抗体,抗PT-IgG 抗体,病原体検査,抗体検査
連絡先 西村直子 〒483-8704 江南市高屋町大松原137 番地 江南厚生病院こども医療センター
受付日 2023年12月15日
受理日 2024年4月15日

小児感染免疫 36 (2):159─164,2024

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