─症例報告─
PVL 産生MRSA による難治性臀部皮下膿瘍を反復した女児例
山下 哲矢1) , 多々良 一彰1) , 島 さほ1) , 三宅 淳1, 2) , 屋宮 清仁1) , 寺町 麻利子1) , 田中 悠平1) , 後藤 憲志1, 2)
1)久留米大学医学部小児科学講座 2)同 感染制御学講座
市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(community-acquired methicillinresistant Staphylococcus aureus;CA-MRSA)は近年,主に健常小児や若年者の皮膚軟部組織感染症の起因菌として報告されるようになった.従来の院内感染型MRSA(hospital-acquired MRSA;HA-MRSA)とは異なり,特にPanton-Valentine leukocidin(PVL)産生型のCA-MRSA は病原性が強い.CA-MRSA による皮下膿瘍を繰り返し,治療に難渋した症例を経験したので報告する.2 歳の女児が4 か月ほど治癒と再発を繰り返す臀部膿瘍のため当院紹介となり,排出された膿からMRSA が検出された.以後も膿瘍形成を繰り返し,兄や母も皮下膿瘍を発症.ST 合剤とリファンピシンの2 剤を併用し,家族への治療と感染対策を行うことでようやく改善を認めた.免疫学的な精査では問題なく,検出されたMRSA の遺伝子解析を行ったところ,PVL産生遺伝子陽性,SCCmec type はⅣa,multilocus sequence typing(MLST)によるsequence type はST8であり,USA300 クローンである可能性も示唆された.
Key words | 皮下膿瘍,黄色ブドウ球菌,PVL,MLST,SCCmec typing |
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連絡先 | 多々良一彰 〒830-0011 久留米市旭町67 久留米大学医学部小児科学講座 |
受付日 | 2022年7月11日 |
受理日 | 2023年2月22日 |
小児感染免疫 35 (1):23─30,2023
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