─症例報告─
生シラス喫食が原因と考えられたクジラ複殖門条虫による条虫症の小児例
鈴木 大樹1) , 大戸 佑二1) , 島崎 聡一1) , 田中 慎一郎1) , 小野 裕子1) , 春木 宏介2) , 松原 知代1)
1)獨協医科大学埼玉医療センター小児科 2)同 感染制御部
クジラ複殖門条虫(Diplogonoporus balaenopterae)の終宿主はヒゲクジラ類であるが,ヒトの小腸にも感染する.感染源については,日本近海で採れたカタクチイワシ,イワシの稚魚(シラス),カツオ,アジ,サバといった小形群集魚と推定されている.これまで本邦では約300 例の報告があるが,小児例はない.13 歳の健常男子が腹痛や下痢,白色紐状物が排泄されたことを主訴に入院した.入院中にも排泄がみられたが,形態学的には判別がつかず,遺伝子検査でクジラ複殖門条虫と同定された.プラジカンテルで駆虫を行い,以降,虫体の排泄はなく経過している.排出された条虫は,腹痛や下痢を引き起こすほど成熟しておらず,ウイルス性腸炎などの原因による下痢で排出された可能性が高いと推測された.感染源は入院2 週間前に近所のスーパーマーケットで購入した生シラスと推測した.近年,海産物の生食が容易に行えることや食趣向の多様化を背景に,小児においても寄生虫感染症について注意する必要がある.
Key words | クジラ複殖門条虫,条虫症,生シラス |
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連絡先 | 大戸佑二 〒343-8555 越谷市南越谷2-1-50 獨協医科大学埼玉医療センター小児科 |
受付日 | 2022年10月3日 |
受理日 | 2023年2月8日 |
小児感染免疫 35 (1):11─16,2023
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