─症例報告─
Extended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生 Shigella sonnei による細菌性赤痢の一例:愛知県内の保育園における集団発生事例
須藤 湧太1) , 服部 文彦1) , 浅井 ゆみこ1) , 畑川 奈都樹1) , 三原 由佳1)
1)刈谷豊田総合病院小児科
海外ではextended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生Shigella sonnei 感染症の報告が散見されるが,本邦ではまれであり,その臨床像や治療効果についての報告は皆無である.今回,保育園で発生した同菌による集団発生事例について当院で経験した症例を中心に報告する.発端となった症例は,4 歳男児で,発熱,嘔吐,粘血便を認め,細菌性腸炎として入院した.入院時の便培養では病原菌は検出されなかったが,入院4 日目に保育園での細菌性赤痢発生が判明したため再検査したところ,ESBL 産生S. sonnei が分離された.薬剤感受性の結果を踏まえた抗菌薬治療を行い,入院8 日目に退院した.保健所が中心となり,本症例が属した保育園の関係者277 人(園児181 人,園児の家族52 人,職員44 人)に検便が行われ,18 人で陽性が判明した.本事例において感染源は特定できなかった.陽性例の多くは無症状や軽症例であったが,消化器症状のある8 例に抗菌薬投与が行われた.6 例のホスホマイシンによる治療例ではすべて除菌が確認され,良好な治療反応性を得たため,治療の選択肢の一つとなる可能性が示唆された.
Key words | ESBL 産生,Shigella sonnei,細菌性赤痢,保育園,集団感染 |
---|---|
連絡先 | 須藤湧太 〒470-1192 豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98 藤田医科大学医学部小児科学 |
受付日 | 2022年10月31日 |
受理日 | 2022年11月17日 |
小児感染免疫 34 (4):291─299,2022
- 第36巻
- 第35巻
- 第34巻
- 第33巻
- 第32巻
- 第31巻
- 第30巻
- 第29巻
- 第28巻
- 第27巻
- 第26巻
- 第25巻
- 第24巻
- 第23巻
- 第22巻
- 第21巻
- 第20巻
- 第19巻
- 第18巻