機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

海外渡航歴がなく診断に難渋したアメーバ赤痢の1 歳児例

花木 由香1) , 奥園 清香1) , 金政 光1) , 本村 良知1) , 石村 匡崇1) , 大賀 正一1)

1)九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野


アメーバ赤痢はEntamoeba histolytica による感染症で,血便を呈する疾患の一つである.主に途上国で不衛生による水系感染をきたすが,日本では海外渡航歴のないアメーバ赤痢の小児例はまれである.今回われわれは,持続する血便を呈し,診断確定までに1 年間要した海外渡航歴のないアメーバ赤痢の1 歳児例を経験したので報告する.症例は1 歳5 か月から鮮血便が持続し,便培養で有意菌は検出されなかった.下部消化管内視鏡で上行結腸から直腸に連続するリンパ濾胞様の隆起と多発するアフタ様びらんおよび潰瘍を認めた.食物蛋白誘発胃腸炎,超早期発症型炎症性腸疾患などを念頭に精査を進めたが診断に至らなかった.他に随伴症状はなく全身状態良好であったが,血便は持続し,貧血と低ガンマグロブリン血症を合併した.発症1 年後に再検した下部消化管の生検病理でアメーバ赤痢と診断し,メトロニダゾール内服が奏効した.海外渡航歴や家族内感染はなく,感染経路は特定できなかった.アメーバ赤痢は日本人の乳幼児にはまれであり,診断に有用な検査は容易ではなく保険収載の問題もあり診断に難渋した.

Key words アメーバ赤痢,超早期発症型炎症性腸疾患(very early onset inflammatory bowel disease; VEO-IBD),食物蛋白誘発胃腸炎,ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction; PCR)法
連絡先 本村良知 〒812-8582 福岡市東区馬出3 丁目1 番1 号 九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野(小児科)
受付日 2022年6月13日
受理日 2022年9月28日

小児感染免疫 34 (4):271─277,2022

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