─症例報告─
Streptococcus intermedius による菌血症をきたし 脳静脈血栓症を合併した急性中耳炎の1 例
吉本 記世香1),藤森 誠1),千野 梓1),廣瀬 翔子1),髙梨 潤一1)
1)東京女子医科大学八千代医療センター小児科
急性中耳炎は,小児科では頻度の高い疾患であり,ときに乳様突起炎や頭蓋内病変などの重篤な合併症を引き起こす.今回,Streptococcus intermedius による菌血症をきたし脳静脈血栓症を合併した急性中耳炎の症例を経験した.症例は11歳の女児で,発熱・耳痛・頸部痛・頸部腫脹があったため耳鼻科を受診し急性中耳炎の診断で経口抗菌薬を処方された.しかし,その後も症状は増悪し,造影CT で左乳突蜂巣炎および左内頸静脈血栓症と診断した.入院時の血液培養からは,S. intermedius が検出され,頭部造影MRI では左S 状静脈洞~内頸静脈に血栓を認めた.抗菌薬治療と抗凝固療法で軽快した.
S. intermedius は口腔内の常在菌であるが,同菌による中耳炎や副鼻腔炎の合併症が近年増加傾向である.ときに,重篤な頭蓋内合併症をきたす可能性があり注意が必要である.また,急性中耳炎の経過中に頸部痛や頸部腫脹を認めた場合には脳静脈血栓症の可能性を考え造影CT や造影MRI を実施することが重要である.
Key words | 小児,脳静脈血栓症,Streptococcus intermedius,急性中耳炎,頸部痛 |
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連絡先 | 吉本記世香 〒276-8524 八千代市大和田新田477-96 東京女子医科大学八千代医療センター小児科 |
受付日 | 2021年12月20日 |
受理日 | 2022年8月22日 |
小児感染免疫 34 (3):211─218,2022
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