─症例報告─
母と同時発症の情報が有用であった 食餌性ボツリヌス症の14 歳女児例
多田 歩未1), 岡田 広1)
1) 松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科
ボツリヌス症は,ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が産生するボツリヌス神経毒素によって脳神経麻痺,四肢・呼吸筋麻痺を生じる中毒性疾患である.症例は14 歳の女児,入院1 日前から嘔吐やめまいが生じ,構音障害,嚥下障害が出現したため入院した.入院後数時間で努力呼吸が著明となり気管挿管,人工呼吸器管理とした.また,深部腱反射,自発運動ともに上肢から消失していき,急速な経過で四肢麻痺に進行した.意思疎通は可能であること,球麻痺症状,下行性の神経麻痺に加え,母も同様の症状を認めており,ボツリヌス症を疑いボツリヌス抗毒素の投与を行った.入院時の血清と便からボツリヌス毒素A 型が検出されボツリヌス症の診断に至り,食餌性が疑われた.本症例の診断には,下行性の神経麻痺などの特徴的所見に加え,母との同時発症の情報が診断に有用であった.急性発症の神経障害の児の診療では,症状の出現や進行順序の確認,周囲感染を丁寧に確認することで,ボツリヌス症を早期に疑うことが可能である.
Key words | 食餌性ボツリヌス症,食中毒,ボツリヌス抗毒素 |
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連絡先 | 岡田 広 〒270-2296 松戸市千駄堀993-1 松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科 |
受付日 | 2021年11月5日 |
受理日 | 2022年6月9日 |
小児感染免疫 34 (3):197─204,2022
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