─症例報告─
先行抗菌薬投与後の検体を用いた網羅的PCR 検査が確定診断に寄与した肝膿瘍の一例
池田 英史1,2),余谷 暢之1,2),吉田 美智子3),船木 孝則3),山元 佳4),宮入 烈3)
1)国立成育医療研究センター教育研修センター
2)同 総合診療部
3)同 感染症科
4)国立国際医療センター国際感染症センター
小児肝膿瘍の発症頻度は10 万人入院あたり5~25 人とまれである.その血液培養陽性率は20~30 % に満たず,原因微生物を特定できず先行抗菌薬治療が開始となり,長期治療となるケースも少なくない.先行抗菌薬投与後に外科的ドレナージを行った検体を用いた定量的polymerase chain reaction(PCR)による網羅的検出法(multi-microbial real time PCR)により原因微生物を特定し,肝膿瘍と診断した症例を経験した.特に既往のない4 歳女児が不明熱の精査に前医で腹部CT 検査を施行され,肝膿瘍を疑われ当院へ紹介された.セフォタキシムとメトロニダゾールによる治療を17 日間行うも改善せず,メロペネムとバンコマイシンに変更し11 日間投与したが膿瘍は拡大した.そこで治療目的で開腹下膿瘍ドレナージを行い,同時に検体を採取した.検体の培養検査では陰性であったが,網羅的PCR 検査を実施したところメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の遺伝子が検出され,MSSA による肝膿瘍と診断した.先行抗菌薬投与後の検体であっても,網羅的PCR 検査を行うことで,原因微生物を特定できる可能性がある.
Key words | 小児,肝膿瘍,網羅的PCR 検査,黄色ブドウ球菌 |
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連絡先 | 余谷暢之 〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1 国立成育医療研究センター教育研修センター |
受付日 | 2022年2月1日 |
受理日 | 2022年4月6日 |
小児感染免疫 34 (2):117─123,2022
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