─症例報告─
トファシチニブ治療中の潰瘍性大腸炎患者に生じた帯状疱疹の一小児例
吉永 武史1) ,日馬 由貴1) ,高原 賢守2)
1)兵庫県立尼崎総合医療センター小児科小児総合診療科
2)同小児科小児アレルギー科
潰瘍性大腸炎に対してトファシチニブ投与中に帯状疱疹を発症した小児例を経験した.症例は12 歳男児.難治性潰瘍性大腸炎と診断され,今回の受診の3 か月前からトファシチニブが開始された.受診当日の朝より右前胸部から背部にかけて内部に水疱形成を伴う有痛性発赤を認め,帯状疱疹と診断され入院した.トファシチニブを中止し,アシクロビルを点滴静注したところ症状の改善を認め,入院4 日目に治療をバラシクロビル内服へ変更し,退院した.抗ヘルペスウイルス薬は合計10 日間投与し,トファシチニブを再開した.トファシチニブは潰瘍性大腸炎の成人例に対して保険適用を持つ唯一のJAK 阻害薬である.成人では水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によって帯状疱疹を生じることが知られているが,小児では帯状疱疹の発症報告はほとんどない.近年,小児期炎症性腸疾患に対する生物学的製剤は広く普及してきているが,JAK 阻害薬などの分子標的薬に関するエビデンスは限られている.これらの薬剤を適正に使用していくために,小児における知見の集積が必要である.
Key words | ヤヌスキナーゼ阻害薬,トファシチニブ,帯状疱疹,水痘・帯状疱疹ウイルス,再活性化 |
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連絡先 | 吉永武史 〒660-8550 尼崎市東難波町2 丁目17-77 兵庫県立尼崎総合医療センター小児科 |
受付日 | 2021年12月20日 |
受理日 | 2022年3月14日 |
小児感染免疫 34 (2):112─117,2022
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