機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

腸間膜リンパ節炎と川崎病様症状を呈した Yersinia enterocolitica 感染症の男子例

敦賀 和志1) , 杉本 和彦1)

国立病院機構弘前病院小児科


Yersinia pseudotuberculosis(Y. pstb)は川崎病(Kawasaki Disease;KD)様症状を呈することは知られているが,Yersinia enterocolitica(Y. ent)による報告は少ない.症例は14歳男子.腹痛と四肢,体幹に皮疹が出現し発熱もみられ近医を受診した.CT検査で上腸間膜動脈周囲のリンパ節腫脹が認められ,血液検査で炎症反応の上昇もあり当院へ紹介入院した.腸間膜リンパ節炎としてセフメタゾールの静注投与を開始し翌日から腹痛は軽快したが,両側眼球結膜の充血といちご舌が出現した.冠動脈病変を認めず,解熱し腹痛も軽快したために入院9日目に退院とした.その後,手足の膜様落屑を呈しKDの主要症状5/6を満たした.便培養では有意菌を認めなかったが,回復期血清においてY. ent(血清型O3)の有意な上昇を認め,Y. ent感染症と診断した.Y. ent感染症はまれにKD様症状を呈することがあり,合併症のひとつとして注意が必要である.

Key words Yersinia enterocolitica,川崎病,腸間膜リンパ節炎,スーパー抗原
連絡先 敦賀和志 〒036-8545 弘前市大字富野町1 国立病院機構弘前病院小児科
受付日 2021年10月27日
受理日 2022年2月15日

小児感染免疫 34 (1):3─9,2022

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