─症例報告─
異なる経過をたどったCoxsackievirus B4による 血球貪食症候群の一絨毛膜二羊膜双胎児
島 さほ1) , 田中 悠平1) , 寺町 麻利子1), 木下 正啓1) , 後藤 憲志1,2)
1)久留米大学医学部小児科学講座 2)同 感染制御部
新生児期の血球貪食症候群(HLH)はまれで,エンテロウイルス関連HLHの予後は軽症から死亡まで,さまざまである.症例は一絨毛膜二羊膜双胎児.母体発熱,肺炎,心不全のため在胎32週5日に緊急帝王切開で出生.第1子は日齢3から無呼吸発作,日齢5から点状出血斑と浮腫を認め,日齢7の血液検査と骨髄の血球貪食像からHLHと診断.ガンマブロブリン併用ステロイドパルス,抗がん剤による治療を行うも心筋炎を合併し日齢29に死亡.第2子は新生児呼吸窮迫症候群のため出生時に人工肺サーファクタントを投与.日齢6から無呼吸発作・血小板数低下あり.骨髄の血球貪食像はなかったが,第1子の状態を考慮しHLHとして治療開始.ガンマグロブリン併用ステロイドパルスで症状が改善した.その後の発達発育も順調.二児ともに全血・便PCR検査でコクサッキーウイルスB4(CoxB4)を検出し,CoxB4関連HLHと診断した.両症例とも母体からのCoxB4に対する中和抗体移行が不十分だったため重症化した可能性がある.また,双胎で経過が異なった理由として,心筋炎合併の有無,治療介入までの時間が考えられる.今回は感染経路を特定できなかったが,第2子は母子面会時水平感染のため発症が遅れた可能性がある.
Key words | 血球貪食症候群,コクサッキーウイルスB4,新生児,双胎児,心筋炎 |
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連絡先 | 島 さほ 〒830-0011 久留米市旭町67番地 久留米大学小児科学講座 |
受付日 | 2021年11月20日 |
受理日 | 2021年2月15日 |
小児感染免疫 34 (1):9─16,2022
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