機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第33巻第4号目次 > 抄録

─症例報告─

下痢・血便を伴わない志賀毒素産生大腸菌O157関連溶血性尿毒症症候群の一例

高瀬 雄介1), 畑地 耕次1), 橋本 邦生1), 白川 利彦1), 中嶋 有美子1), 舩越 康智1), 森内 浩幸1)

1)長崎大学病院小児科


志賀毒素産生大腸菌関連溶血性尿毒症症候群(STEC-HUS)は,小児の血栓性微小血管症(TMA)の原因として最も頻度が高い.STEC による腸炎症状が先行し,特に大腸菌O157 によるSTEC-HUS では血便を合併する例が多い.今回われわれは,下痢や血便がみられず早期診断が困難であったO157 によるSTEC-HUS の一例を経験した.症例は8 歳女児.発熱と腰痛で発症した5 日後に,急激に溶血性貧血・血小板減少・腎機能障害が出現した.遺伝的背景によるTMA を疑う家族歴があったことから,STEC-HUS の診断が得られないまま血漿交換を含む治療対応に迫られた.排便がなく便検体の確保に難渋し,入院5 日目の浣腸便で志賀(ベロ)毒素が検出されSTEC-HUS と診断できたが,便培養やSTEC 抗原検査は陰性で,血清O 抗原凝集抗体検査によりO157 感染と確定した.下痢や血便を認めないSTEC-HUS 症例はTMAに包含される他の稀少疾患と類似し,臨床的特徴や一般的な血液検査では鑑別困難で ある.鑑別過程においては便検体を用いた迅速検査などが優先されるが,検出感度には留意すべきであり,血清学的検査による補完が有効である.

Key words 志賀毒素産生大腸菌,O157,溶血性尿毒症症候群,血栓性微小血管症,血清学的検査
連絡先 高瀬雄介 〒852-8501 長崎市坂本1-7-1 長崎大学病院小児科
受付日 2021年4月2日
受理日 2021年9月6日

小児感染免疫 33 (4):359─366,2021

PAGE TOP