─症例報告─
Sydenham舞踏病による多彩な精神神経症状を呈したリウマチ熱の 1 例
平出 智裕1), 小池 大輔1), 加藤 文英1)
1)島根県立中央病院小児科
リウマチ熱は日本ではまれな疾患である.症例は 10 歳男児.受診 1 か月前に一過性の発熱と咽頭痛を認めたが,自然に軽快した.その後,母子分離不安や情緒不安定となり,学校の授業中に顔面のチックと四肢の不随意運動を認め当院へ救急搬送された.入院時,炎症反応の上昇を認め,鑑別疾患として Sydenham 舞踏病が疑われた.A 群β溶血性レンサ球菌(GAS)感染に特徴的な咽頭所見は認めなかったが,迅速抗原検査で GAS が陽性となった.抗菌薬開始後も精神神経症状は改善せず,免疫グロブリン療法,その後ステロイドパルス療法を行い改善した.心雑音は聴取しなかったが,心エコーで僧帽弁閉鎖不全症と大動脈弁閉鎖不全症を認め,リウマチ熱の診断基準の主症状 2 項目(Sydenham 舞踏病,心炎)を満たし,リウマチ熱と診断した.リウマチ熱による心炎は,聴診のみでは見逃す可能性があるため,リウマチ熱が疑われる際には積極的に心エコーを行う必要がある.また,Sydenham 舞踏病は,多彩な精神神経症状を伴い,リウマチ熱の他の症状よりも遅れて出現するため,GAS 感染に特徴的な咽頭所見を認めないことが多く,注意が必要である.
Key words | Sydenham 舞踏病,リウマチ熱,Jones criteria,心エコー |
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連絡先 | 平出智裕 〒 693-8555 出雲市姫原 4-1-1 島根県立中央病院小児科 |
受付日 | 2021年4月2日 |
受理日 | 2021年6月15日 |
小児感染免疫 33 (3):262─269,2021
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