─症例報告─
化膿性リンパ節炎にウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)を併発した1 歳女児例
吉本 拓郎1), 岡田 広1)
1)松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科
二次性の血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome;HPS)にはさまざまな原因があるが,細菌性感染症の治療中に血球減少を認めた場合,薬剤性や治療失敗の可能性が先に考慮され,ウイルス感染の合併を想起することは困難である.今回,化膿性頸部リンパ節炎の治療中にパルボウイルスB19 によるウイルス関連血球貪食症候群(virus-associated hemophagocytic syndrome;VAHS)を発症した症例を経験した.症例は1 歳女児.4 日前からの発熱および2 日前からの右頸部の腫脹を主訴に受診し,頸部リンパ節炎の診断で入院となった.抗菌薬治療を開始し入院7 日目,9 日目に切開排膿を行い,入院8 日目に抗菌薬をVCM 単剤へ変更した.その後,症状の改善を認めたため入院20 日目に抗菌薬を終了としたが再度発熱を認め,入院22 日目の血液検査で三系統の血球減少と骨髄検査で血球貪食像を認めたためHPS と診断した.プレドニゾロンを計2 週間投与した結果,解熱し,血液検査上も改善を認めたため,入院29 日目に退院とした.臨床経過や検査結果からパルボウイルスB19 によるVAHS が示唆された.本症例から,化膿性頸部リンパ節炎の治療経過中に血球減少や再発熱を認める場合,細菌感染の増悪,薬剤性などによるものの他にウイルス感染による二次性HPS を考慮する必要があると考えられた.
Key words | ウイルス関連血球貪食症候群,化膿性リンパ節炎,パルボウイルス |
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連絡先 | 吉本拓郎 〒270-2296 松戸市千駄堀993-1 松戸市立総合医療センター |
受付日 | 2021年2月10日 |
受理日 | 2021年5月31日 |
小児感染免疫 33 (3):244─250,2021
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