─症例報告─
感染源の特定が困難であった乳児結核性髄膜炎の一例
̶公衆衛生学的視点からの考察̶
長嶺 路子1), 成田 友代1), 德永 修2), 辻 佳織3), 石立 誠人4), 瀧井 猛将5)
1)東京都福祉保健局保健政策部 2)国立病院機構京都南病院 3)世田谷保健所 4)東京都立小児総合医療センター 5)結核予防会結核研究所
症例は生後6 か月時にBCG ワクチンを接種した男児.その頃から発熱や不機嫌などの症状を反復し,小児科受診を繰り返した.生後10 か月時に1 週間程度,嘔吐を反復した後に突然の意識障害が出現し救急搬送され,空洞を伴う肺結核および結核性髄膜炎と診断された.その後の接触者健診で家族内に感染源となり得る結核症例は発見されず,比較的軽微な接触により感染したことが推測された.わが国の結核罹患状況は順調に改善してきたが,行動範囲が限られる乳児期においても結核感染機会は無視できる状況には至っておらず,結核に対して弱い存在である乳児を守るため,① 標準接種期間内のBCG ワクチン接種,② コッホ現象の慎重な観察と評価,③ 遷延する呼吸器症状や反復する発熱などの症状を主訴とする例には結核も念頭に置いた診療などが重要である.また,本例では感染経路推定を目的に分離された菌の縦列反復配列多型分析を行い,関係する自治体が保有する菌株情報と比較したが,感染源・感染経路の特定には至らなかった.見えない結核感染の連鎖を断つためには,病原体サーベイランス体制の充実とともに社会ネットワーク分析を用いた分子疫学的解析の導入が望まれる.
Key words | 小児結核,BCG ワクチン,コッホ現象,縦列反復配列多型(VNTR)分析,結核菌サーベイランス |
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連絡先 | 長嶺路子 〒112-8555 東京都文京区春日1-16-21 文京保健所予防対策課 |
受付日 | 2020年6月11日 |
受理日 | 2021年4月29日 |
小児感染免疫 33 (3):237─244,2021
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