機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

Vancomycinの薬剤熱によりDaptomycinで治療し得た心臓血管外科術後MRSA縦隔炎の乳児例

石田 貴裕1), 大竹 正悟1), 笠井 正志1)

1)兵庫県立こども病院感染症内科


術後縦隔炎は長期間の抗菌化学療法を要するだけでなく,致死率も高率となる重症感染症であり,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が原因菌の場合は外科的ドレナージとVancomycinを用いて治療を行うのが一般的である.しかし,Vancomycinによる腎機能障害や薬剤熱のような副作用が問題となった場合,代替薬を使用する必要があり,その選択に難渋することがある.一方でDaptomycinは添付文書上,幼若動物において神経障害などの有害事象が出現したとの記載があり,乳児への使用は消極的にならざるを得ない.実際に,乳児においてMRSA縦隔炎にDaptomycin単剤で治療し得た報告は検索した限りない.乳児のMRSA縦隔炎に対してVancomycinで治療を開始したが,薬剤熱のためDaptomycinに変更し,安全に治療を完遂した1例を経験した.副作用などの理由によりVancomycinが使用できない乳児においては,DaptomycinがMRSA縦隔炎の治療の選択肢になり得ることが示唆された.

Key words ダプトマイシン, MRSA縦隔炎, 心臓血管外科術後, 乳児
連絡先 大竹正悟 〒650-0047 神戸市中央区港島南町1丁目6-7 兵庫県立こども病院感染症内科
受付日 2020年10月10日
受理日 2021年4月28日

小児感染免疫 33 (3):232─232,2021

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