機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

インフルエンザ A/H3N2 ウイルス感染に伴って縦隔気腫と皮下気腫をきたした小児例

山下 舞子1), 大砂 光正1), 田中 文子1), 川上 千春2), 七種 美和子2), 宇宿 秀三2), 高下 恵美3)

1)済生会横浜市南部病院小児科・新生児内科 2)横浜市衛生研究所 3)国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター


症例は生来健康な5 歳男児.A 型インフルエンザに罹患し,第4 病日からオセルタミビルの内服を行ったが解熱せず,第6 病日から著明な顔面腫脹をきたし第7 病日に入院となった.頸胸腹部造影CT で顔面から臀部に及ぶ広範な縦隔気腫・皮下気腫が確認され,顔面腫脹は皮下気腫によるものと診断した.発熱およびエアリークは抗菌薬と酸素投与のみで軽快し第14病日に退院となった.本症例には外傷や囊胞性病変,気管支喘息などエアリークの誘因となり得る既存リスクはなく,鋳型気管支炎の所見も認めなかった.本症例からは,エアリークの原因としてはまれであるA/H3N2ウイルスが検出され,バロキサビル マルボキシル未使用にもかかわらずバロキサビル低感受性インフルエンザA/H3N2 PA I38T 変異ウイルスであった.本症例は過去にインフルエンザに罹患したことがない5 歳児であり,獲得免疫の未熟性からウイルス排除に時間がかかり,気道炎症が遷延化し,気道過敏性が増したことでエアリークを生じたと考えられた.本症例の臨床経過から,A/H3N2 ウイルス感染がエアリークの誘因となり得ること,このPA I38T 変異ウイルスが野生株と同等の感染性・病原性を持っていることが推察された.

Key words 縦隔気腫,エアリーク,インフルエンザ,バロキサビル低感受性ウイルス,小児
連絡先 田中文子 〒234-8503 横浜市港南区港南台3 丁目2 番10 号 済生会横浜市南部病院小児科
受付日 2020年11月30日
受理日 2021年4月13日

小児感染免疫 33 (3):217─224,2021

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