機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第33巻第2号目次 > 抄録

─症例報告─

RSウイルスとヒトメタニューモウイルス感染後に発症した不全型川崎病

関根 薫平1), 奥村 謙一1), 篠塚 淳1)

1)宇治徳洲会病院小児科


川崎病の原因はいまだ不明であるが,川崎病と呼吸器感染症の関連の検討は比較的少ない.今回われわれはRSウイルスおよびヒトメタニューモウイルスによる呼吸器感染が先行した不全型川崎病の一例を経験した.症例は8か月女児.40℃の発熱,咳嗽,鼻汁を認め,症状が持続していたため当院に入院した.RSウイルスおよびヒトメタニューモウイルスの迅速検査陽性および胸部エックス線写真で浸潤影を認めたため,気管支肺炎と診断され,細菌混合感染も疑い抗菌薬投与などの加療を開始された.入院第3日に再度発熱,顔面,体幹の発赤,浮腫を認めた.入院第5日に血液検査でBNP値の上昇を認め,川崎病主要徴候を4項目しか満たさなかったが,不全型川崎病と診断し,免疫グロブリン,アスピリン投与を開始した.入院第6日に発熱,口唇の発赤などの川崎病主要徴候は改善した.複数のウイルスによる呼吸器感染症が炎症を強力に惹起し,川崎病発症の原因となる可能性がある.また,RSウイルスおよびヒトメタニューモウイルスによる呼吸器感染が先行したため,不全型川崎病の診断,治療開始時期に苦慮したが,BNP測定が不全型川崎病の一助となった.

Key words 川崎病, RSウイルス, ヒトメタニューモウイルス, BNP
連絡先 奥村謙一 〒611-0042 宇治市小倉町槙島町石橋145 宇治徳洲会病院小児科
受付日 2020年7月13日
受理日 2021年3月25日

小児感染免疫 33 (2):149─154,2021

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