機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第33巻第2号目次 > 抄録

─症例報告─

紫斑がなく腹部症状が唯一の症状であったIgA血管炎の2例

石川 真紀子1), 中島 千賀子1), 三村 成巨1), 竹内 穂高1), 黒沢 祥浩1)

1)上尾中央総合病院小児科


IgA血管炎は,紫斑,関節症状,腹部症状,腎炎を特徴とする細小血管炎であるが,腹部症状が初発症状となった場合は診断に難渋することがある.私達は腹部症状が唯一の症状であったIgA血管炎の2例を経験したので報告する.
【症例1】5歳,女児.突然の嘔吐と腹痛を認め,第4病日当科に入院.その後黒色便が出現し,炎症反応高値,線溶系の亢進,低蛋白血症,画像検査で腸管浮腫を認めたためIgA血管炎を疑いプレドニゾロンの静注を開始.さらに,第ⅩⅢ因子は35%と低下し,第ⅩⅢ因子とアルブミンの補充を行ったが,改善せず高次医療機関へ転院.消化器内視鏡を行いIgA血管炎と診断され,絶食と経静脈栄養で改善した.
【症例2】3歳,女児.腹痛と嘔吐,黒色便を認め,第6病日当科に入院.炎症反応高値,線溶系の亢進,画像検査で腸管浮腫を認め,第ⅩⅢ因子が30%であったので,IgA血管炎と診断.第ⅩⅢ因子の補充とPSL静注を開始したところ症状は改善した.2例とも経過中に紫斑や関節症状は認めなかった.
腹痛と便潜血陽性,炎症反応高値,線溶系の亢進,腸管浮腫を認めた場合は,紫斑がなくてもIgA血管炎を念頭に置き治療を開始すべきである.

Key words IgA血管炎, 腹部症状, 紫斑, Dダイマー
連絡先 石川真紀子 〒362-8588 上尾市柏座1-10-10 上尾中央総合病院小児科
受付日 2020年12月22日
受理日 2021年3月24日

小児感染免疫 33 (2):133─141,2021

PAGE TOP