機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第33巻第2号目次 > 抄録

─症例報告─

新型コロナウイルス感染症流行期に発症した熱性けいれん重積発作に伴う神経原性肺水腫の一例

竹尾 俊希1), 河野 好彦1), 手塚 宜行2), 原 紳也1)

1)トヨタ記念病院小児科
2)名古屋大学医学部附属病院中央感染制御部


神経原性肺水腫(neurogenic pulmonary edema;NPE)はさまざまな中枢神経障害に続発する肺水腫だが,熱性けいれんに伴うNPEの報告は少ない.熱性けいれん既往のある2歳男児が第1病日から発熱し,約50分の強直間代性発作を認めた.ジアゼパム静脈内投与で止痙したが,努力呼吸が持続し酸素投与を必要とし,胸部エックス線検査およびCT検査で両側肺門部中枢側優位にすりガラス陰影を認めた.酸素投与のみで約10時間後に呼吸状態が改善した経過からNPEと診断した.新型コロナウイルス感染症流行期であったことから,鑑別のためにSARS-CoV-2のPCRを提出したが陰性だった.第4病日から歯肉口内炎が出現し,血清抗体価から単純ヘルペスウイルス性歯肉口内炎と診断した.経過中にNPEの再発は認めなかった.小児の呼吸障害においては感染性肺炎の占める割合が大きく,特にパンデミックなどの特定の感染症流行期では,NPEを含む非感染性肺疾患の鑑別診断が遅れる恐れがある.熱性けいれんでも,特にけいれん重積発作の場合はけいれん停止後も呼吸状態の変化に注意し,呼吸障害が続発した場合はNPEの可能性を早期に認識することが重要である.

Key words 小児, 神経原性肺水腫, 熱性けいれん, 新型コロナウイルス感染症
連絡先 竹尾俊希 〒471-8513 豊田市平和町1番地1 トヨタ記念病院小児科
受付日 2020年9月24日
受理日 2021年3月10日

小児感染免疫 33 (2):113─119,2021

PAGE TOP