─症例報告─
長期の抗菌薬使用後に発症したStenotrophomonas maltophiliaによる髄膜炎の男児例
堀川 輝斗1), 岡田 広1)
1)松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科
Stenotrophomonas maltophiliaは多剤耐性グラム陰性桿菌であり,集中治療管理や先行する広域抗菌薬投与・脳神経外科手術などは本菌による感染症の発症リスクとなる.重症頭部外傷後に複数回の脳神経外科手術や長期の抗菌薬使用を経て発症したS. maltophiliaによる髄膜炎の1例を経験した.
症例は5歳,男児.4歳2か月時に重症頭部外傷に対して緊急開頭術が施行され,続発した脳室内出血と水頭症の管理のため繰り返し脳神経外科手術を施行されていた.治療中にStaphylococcus epidermidisによる髄膜炎やカテーテル関連尿路感染症を併発し,カルバペネム系薬を含めた長期の抗菌薬管理をされていた.5歳3か月時から髄液培養でS. maltophiliaが検出され,リネゾリド,セフタジジムで加療するも改善なく,デバイス入れ替え後も再燃を繰り返すため,当院へ転院となった.転院後にST合剤(ST)・ミノサイクリンで治療を開始し,頭蓋上に残存していた異物の除去やデバイス交換を行ったところ,髄液培養は陰性化し再燃を認めず経過した.
S. maltophiliaによる髄膜炎はまれであるが,リスク因子を有する場合は起因菌として想定する必要がある.抗菌薬の第一選択はSTであり,発症時は早期に適切な抗菌薬療法を行うとともに不要なデバイス抜去を徹底することが重要である.
Key words | Stenotrophomonas maltophilia, 髄膜炎 |
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連絡先 | 堀川輝斗 〒270-2252 松戸市千駄堀993-1 松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科 |
受付日 | 2020年9月12日 |
受理日 | 2020年3月1日 |
小児感染免疫 33 (2):107─112,2021
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