機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第33巻第2号目次 > 抄録

─原著─

2014~2018年の当院小児科におけるサルモネラ腸炎の臨床像,O抗原血清型と抗菌薬感受性

赤野 琢也1), 西村 直子1), 村瀬 有香1), 山田 眞子1), 安藤 拓摩1), 伊藤 卓冬1), 武内 俊1), 後藤 研誠1), 竹本 康二1), 尾崎 隆男1)

1)江南厚生病院こども医療センター


サルモネラ属菌(以下,サルモネラ菌)は小児における細菌性腸炎の重要な起因菌である.今回,2014~2018年の5年間に当院小児科を受診した胃腸炎患者で,便または血液からサルモネラ菌が分離された80例について後方視的検討を行った.全分離株(n=80)について,O抗原の血清型を調査するとともに14種抗菌薬(ABPC,CFDN,CDTR,CPDX,CTRX,CAZ,CMZ,PAPM,SBT/ABPC,TAZ/PIPC,MINO,AZM,TFLX,FOM)のMIC値を測定し,CLSIの基準に従いS,I,Rを判定した.
患者発生は7~9月の夏季に多く,年齢中央値は6歳4か月(10か月~14歳)であった.主な症状の発現頻度は,発熱95%,下痢93%,腹痛73%,嘔吐25%,血便21%であった.56例(70%)が入院治療を要し,菌血症と熱性けいれんをそれぞれ2例認めた.分離菌株の血清型は,O4群が37株(46%)と最多で,O7群19株,O8群14株の順であった.ABPCとCFDNにそれぞれ6.3%,CPDX,CTRX,CAZにそれぞれ7.5%,SBT/ABPCに5%,TAZ/PIPCとCMZにそれぞれ1.3%,MINOに20%が耐性(I+R)であった.われわれの過去2回の調査(2004年n=17,2010年n=23)ではみられなかったセフェム系抗菌薬耐性株が出現しており,今後の動向に注意が必要である.

Key words サルモネラ腸炎, O抗原血清型, 抗菌薬感受性, セフェム系抗菌薬耐性株
連絡先 西村直子 〒483-8704 江南市高屋町大松原137番地 江南厚生病院こども医療センター
受付日 2020年12月22日
受理日 2021年4月1日

小児感染免疫 33 (2):84─92,2021

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