─総説─
小児の尿路感染症Up-to-Date
金子 一成1)
1)関西医科大学小児科学講座〔〒573-1010 枚方市新町2-5-1〕
乳幼児の尿路感染症(UTI)は日常的疾患であるが,特異的所見に乏しく見逃されやすい.また,採尿バッグで採取した尿の培養結果は診断的価値が低い.したがって,感染巣不明の発熱を呈する乳幼児においては,UTIを念頭において抗菌薬投与前に尿培養の検体を導尿カテーテルで採取する.
UTIは腸内細菌によるものがほとんどなので,治療は第1~3世代のセフェム系抗菌薬を投与すれば良いが,効果のない場合には,近年,基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌などの多剤耐性菌が増加しているため注意が必要である.
発熱を伴う上部UTIは腎実質の炎症を伴うため,反復すると腎の瘢痕化を生じ,恒久的腎障害を招く.また,上部UTIを起こした小児には過半数に膀胱尿管逆流(VUR)などの先天性腎尿路異常や機能性排尿排便障害(BBD)が存在する.したがって,上部UTIの反復を防ぐにはVURやBBDを見逃さないことが重要で,そのためには超音波検査や排尿時膀胱尿道造影を実施するとともにBBDに関する問診を忘れてはならない.高度VURやBBDを認めた場合には少量の抗菌薬の長期予防内服や排尿・排便指導を行う.
最後にUTIに関する研究面での話題として,尿路の自然免疫系や尿細菌叢について紹介する.
Key words | 腸内細菌, 細菌尿, 膀胱尿管逆流, 機能性排尿排便障害, 自然免疫 |
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小児感染免疫 33 (1):58─65,2021
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