機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

無莢膜型インフルエンザ菌による子宮内感染が疑われた新生児例

秋好 瑞希1,3), 堀江 昭好1), 藺牟田 直子4), 西 順一郎4), 成相 昭吉1,2)

1)松江赤十字病院小児科 2)同 感染症科 3)独立行政法人国立病院機構浜田医療センター小児科 4)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科微生物学分野


母体は妊娠33週4日で前期破水し,頻脈と白血球増多・CRP上昇を認めた.同期して胎児も陣痛胎児心拍数図で頻脈を認めたため,絨毛膜羊膜炎(chorioamunionitis;CAM)が疑われ緊急帝王切開となった.患児は33週5日に新生児仮死を伴い2,156gで出生した.
帝王切開術野で肉眼的にCAMと診断され,胎盤組織と臍帯ぬぐい液および児の耳孔と咽頭のそれぞれからインフルエンザ菌が検出された.児の血液培養は陰性であったが,臨床的に敗血症と診断した.薬剤感受性は,いずれもβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性であった.後日,いずれも無莢膜型インフルエンザ菌(NTHi),生物型Ⅲであることが判明した.
CAMは胎盤病理所見でも確認され,NTHiは産道から上行性に子宮内感染したと考えられた.
インフルエンザ菌b型ワクチン普及後,侵襲性NTHi感染症の報告が散見されるようになった.子宮内感染による早発型新生児NTHi感染症についても留意し,症例を集積する必要がある.また,NTHi臨床分離株の薬剤感受性の監視も必要である.

Key words 無莢膜型インフルエンザ菌, 生物型, 子宮内感染, 絨毛膜羊膜炎, 早発型新生児感染症
連絡先 秋好瑞希 〒697-8511 浜田市浅井町777番地12 独立行政法人国立病院機構浜田医療センター
受付日 2020年8月29日
受理日 2020年12月9日

小児感染免疫 33 (1):35─40,2021

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