─症例報告─
ぶどう膜炎及び多発腎病変を呈した非典型的ネコひっかき病の一例
林 大地1), 川本 美奈子1), 川本 典生1), 大西 秀典1)
1)岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学
ネコひっかき病(CSD)はネコの咬傷などで起こるBartonella henselae感染症である.リンパ節腫脹をきたす典型的CSDの他,多彩な全身症状を示す非典型的CSDがある.今回我々は眼及び腎病変を呈した非典型的CSDを経験したので報告する.
症例は13歳女児で,不明熱として当科を紹介された.入院時は発熱や表在リンパ節腫脹は認めなかったが,血液検査で炎症反応の上昇を認め,眼底検査ではぶどう膜炎を認めた.入院後は間欠熱が続き,造影CT検査で両側腎実質に斑状造影不良域を認めた.急性巣状性細菌性腎炎を疑いオキサセフェム系薬で治療したところ3日後に解熱したが,治療効果判定目的で施行したMRI検査で腎病変の残存を認めた.その後,血清B. henselae抗体の上昇が判明したためCSDと診断し,ニューキノロン系薬の治療を追加した.追加治療後のMRI検査では腎病変の消失を確認し退院とした.退院1か月後の造影CT検査でも腎病変の消退維持を確認し,更に3か月間症状の再燃を認めず終診とした.
本症例はまれな眼及び腎病変を併発するCSDであった.原因不明の発熱患者では,リンパ節腫脹の有無にかかわらず,ペット飼育歴の問診や,眼底検査や腎病変などの精査が重要である.
Key words | ネコひっかき病, 不明熱, ぶどう膜炎, 腎病変, 非典型例 |
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連絡先 | 林 大地 〒501-1194 岐阜市柳戸1-1 岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学 |
受付日 | 2020年7月13日 |
受理日 | 2020年11月18日 |
小児感染免疫 33 (1):22─29,2021
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