─原著─
小児市中尿路感染症に対するセフメタゾールの臨床的有効性に関する検討
舩木 慎太郎1), 松原 啓太1), 佐藤 友紀1), 下薗 広行1), 岡野 里香1)
1)広島市立舟入市民病院小児科
広域抗菌薬である第3世代セフェム系薬は小児の市中尿路感染症に対する初期抗菌薬として多用されるが,近年,抗菌薬適正使用が推進されていること,市中における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌が増加していることから,漫然とした使用は望ましくない.今回我々は,市中尿路感染症に対し第3世代セフェム系薬のセフォタキシム(CTX)とセファマイシン系薬のセフメタゾール(CMZ)の臨床的有効性を後方視的に比較した.対象は2016年1月〜2019年12月に当院で入院加療を行った189例である.起因菌はEscherichia coliが168例で,そのうち34例(20.2%)がESBL産生菌であった.全ての症例を対象とした場合,CMZ投与群(n=144)とCTX投与群(n=45)で年齢,性別,重症度などの患者背景と有効率に有意差はなかった.起因菌がESBL産生菌の場合,有効率はCMZ投与群92.6%(25/27)に対しCTX投与群57.1%(4/7)でCMZ投与群が有意に高かった(p=0.048).本研究ではCMZはCTXと比較し一般的な小児の市中尿路感染症について非劣性であり,ESBL産生菌感染症に対して有効性が高いことが示された.以上から軽症~中等症の小児の市中尿路感染症ではCMZを初期抗菌薬として選択できる可能性が示唆された.
Key words | 尿路感染症, extended-spectrum β-lactamase産生菌, empiric therapy, セフメタゾール, セフォタキシム |
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連絡先 | 舩木慎太郎 〒734-8551 広島市南区霞1-2-3 広島大学病院小児科 |
受付日 | 2020年5月19日 |
受理日 | 2020年11月30日 |
小児感染免疫 33 (1):7─14,2021
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