機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

歯ブラシ外傷後に嫌気性菌による深頸部膿瘍を発症した一幼児例

玉井 哲郎1), 阿部 祥英2), 長濱 隆明1), 山田 良宣4), 齋藤 秀嘉3), 曽我 恭司3), 梅田 陽3)

1)昭和大学医学部小児科学講座, 2)昭和大学江東豊洲病院こどもセンター, 3)昭和大学横浜市北部病院こどもセンター, 4)昭和大学横浜市北部病院耳鼻咽喉科


症例は2歳の女児.歯ブラシをくわえたまま転倒し,その翌日に当院を受診した.右前口蓋弓外上方に線状の創傷はあったが,活動性出血,嚥下痛なく,経過観察された.しかし,その5日後に発熱,嚥下困難,頸部腫脹のため,再診した.頸部造影CTで右側の深頸部に膿瘍および気道の偏位を示唆する所見が得られ,同日,気管挿管および全身麻酔下で深頸部膿瘍に対する切開排膿術が施行された.膿培養検査では口腔内常在菌で嫌気性菌のFusobacterium nucleatumEikenella corrodenが検出され,膿瘍の原因菌と判断された.歯ブラシは洗浄しても無菌ではない.歯ブラシによる口腔内刺傷は,本症例のように口腔内常在菌によって深頸部膿瘍や気道狭窄が惹起される重篤な例も存在するため,注意が必要である.

Key words 歯ブラシ外傷, 深頸部膿瘍, 嫌気性菌
連絡先 阿部祥英 〒135-8577 東京都江東区豊洲5-1-38 昭和大学江東豊洲病院こどもセンター
受付日 2019年10月1日
受理日 2020年6月30日

小児感染免疫 32 (4):363─368,2020

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