機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第32巻第4号目次 > 抄録

─原著─

川崎医科大学小児科における最近10年間のマイコプラズマ入院例についての検討

井上 智貴1), 大石 智洋1), 髙橋 研斗1), 若林 尚子1), 河野 美奈1), 加藤 敦1), 赤池 洋人1), 田中 孝明2), 宮田 一平1), 大野 直幹1), 中野 貴司2), 尾内 一信1)

1)川崎医科大学小児科学講座, 2)同 総合医療センター小児科


Mycoplasma pneumoniaeM. pneumoniae)肺炎は日本国内において,2011~2012年,2015~2016年の流行と同時にマクロライド耐性M. pneumoniae(MRMP)も増加したが,近年MRMPが減少したことを我々は報告してきた.しかし,これらの全期間での小児M. pneumoniae感染症の入院例について検討した報告はない.
対象は,2010年1月〜2019年12月に,川崎医科大学附属病院小児科にM. pneumoniaeによる下気道感染症により入院した0歳〜15歳とした.M. pneumoniaeは,鼻咽頭スワブ検体を採取し,リアルタイムPCRで検出し,ダイレクトシークエンス法でマクロライド耐性の有無も検出した.入院例の背景も調査した.
対象とした入院例は計114例で,症例数とマクロライド耐性率はいずれも流行時に増加し,非流行時は減少する傾向だった.乳幼児では就学児に比し,気管支喘息やステロイド全身投与およびSPO2低下の割合が有意に高く,就学児では未就学児に比し,中等症以上の肺炎像の割合が有意に高かった.マクロライド耐性別ではMRMP検出例で中等症以上の胸部X線所見の割合が有意に高い結果であった.
小児のM. pneumoniae感染症では入院の主な要因として,乳幼児における気管支喘息や低酸素血症,就学児における肺炎像の悪化,そしてMRMPによる肺炎像の悪化が考えられた.

Key words マイコプラズマ, 小児, 入院
連絡先 大石智洋 〒701-0192 倉敷市松島577 川崎医科大学小児科学講座
受付日 2020年5月21日
受理日 2020年11月9日

小児感染免疫 32 (4):345─351,2020

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