─原著─
ガイドラインに基づいた小児の市中肺炎に対する注射抗菌薬アンピシリンによる初期治療の検証
髙橋 研斗1), 大石 智洋1), 井上 智貴1), 若林 尚子1), 河野 美奈1), 加藤 敦1), 寺西 英人1), 赤池 洋人1), 田中 孝明2), 宮田 一平1), 大野 直幹1), 中野 貴司2), 尾内 一信1)
1)川崎医科大学小児科学講座, 2)同 総合医療センター小児科
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017が2016年に改訂され(以下GL2017),小児市中肺炎の入院例に対する初期治療として,アンピシリン(ABPC)が推奨された.そこで,2016年10月から2019年9月までの3年間に当科に入院し,GL2017によるスコアにおいて中等症以上かつ細菌性肺炎と考えられる症例を対象に,ABPCの有効性を,スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)およびセフトリアキソン(CTRX)と比較し検討した.対象者は計161例(ABPC投与群72例,SBT/ABPC投与群46例,CTRX投与群43例)で,平均年齢2歳1か月,男児:女児96:65,中等症85%,重症15%であった.喀痰培養では,全体で肺炎球菌が73例(うちpenicillin-resistant Streptococcus pneumoniae(PRSP)12%),インフルエンザ菌が84例(うちbeta-lactamase-nonproducing ampicillin-resistant strain(BLNAR)25%),beta-lactamase-producing ampicillin-resistant strain(BLPAR)11%)検出された.ABPC投与群において,喀痰培養でPRSP(4例),BLNAR(5例),BLPAR(2例)を検出した症例を含め,全体の92.2%の症例で治療開始後48時間未満に解熱を認めた.他群との有意な差はみられなかった.ABPCは,小児市中肺炎の入院例に対する初期治療として妥当と思われた.
Key words | 小児, 市中肺炎, ガイドライン, アンピシリン, 治療 |
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連絡先 | 大石智洋 〒701-0192 倉敷市松島577 川崎医科大学小児科学講座 |
受付日 | 2020年3月13日 |
受理日 | 2020年9月15日 |
小児感染免疫 32 (4):324─332,2020
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