機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─原著─

小児扁桃周囲膿瘍の臨床的特徴

矢野 瑞季1), 宇田 和宏2,3), 塚本 淳也1), 荒木 孝太郎2,3), 福岡 かほる2,3), 松島 崇浩1), 鈴木 知子1), 榊原 裕史1), 幡谷 浩史1), 堀越 裕歩2,3)

1)東京都立小児総合医療センター総合診療科, 2)同 感染症科, 3)同 免疫科


扁桃周囲膿瘍は,重篤な合併症で致死的になり得る深頸部感染症であり,早期発見・治療が望ましいが,本邦小児の詳細な臨床経過に関する報告は少ない.今回,扁桃周囲膿瘍と診断した16例を後方視的に検討した.発熱は14例(88%)で認め,診断前の有熱期間が48時間以内の症例は7例(50%)と半数を占めた.その他の臨床症状・所見は,咽頭痛16例(100%),口蓋垂偏位14例(88%),開口障害9例(56%),嚥下困難8例(50%)であった.A群レンサ球菌(GAS)迅速検査は9例(56%)に施行され,陽性は2例(22%)であった.外科的介入によって11例(79%)で有効な排膿が得られた.GAS迅速検査および穿刺・切開排膿検体の培養検査で原因菌が判明した症例は12例(75%)であり,GASが6例(50%)で最も多く,次いでPrevotella spp. 4例(33%),Bacteroides spp. 3例(25%)であり,複数菌感染が8例(67%)に上った.抗菌薬はアンピシリン/スルバクタムが全例で選択され有効であった.急性扁桃炎患者では有熱期間やGAS迅速検査の結果によらず,開口障害や口蓋垂偏位の出現に注意して経過を追い,扁桃周囲膿瘍の早期診断につなげることが重要であると考えられた.

Key words 深頸部感染症, 開口障害, 口蓋垂偏位, 急性扁桃炎
連絡先 矢野瑞季 〒183-8561 府中市武蔵台2-8-29 東京都立小児総合医療センター総合診療科
受付日 2019年12月10日
受理日 2020年8月12日

小児感染免疫 32 (4):315─323,2020

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