─症例報告─
結核性胸膜炎が疑われた1例
田浦 喜裕1,2), 松村 うつき3), 浅妻 正道4), 森田 高史1), 伊藤 陽里1)
1)京都中部総合医療センター小児科, 2)京都府立医科大学附属病院小児科, 3)国立病院機構舞鶴医療センター小児科, 4)松下記念病院小児科
結核性胸膜炎は稀ではあるがどの小児にも発症し得る疾患である.診断のために胸水検査が行われることが多いが,確定診断が得られることは少ない.症例は10歳男児.入院4日前から発熱,咳,胸痛,呼吸困難があり,精査加療目的に入院した.呼吸音は左優位に減弱しており胸部エックス線,CT検査で左側に大量の胸水を認めた.細菌性胸膜炎,肺炎マイコプラズマ感染に伴う胸膜炎を考え,アンピシリン・スルバクタム,アジスロマイシンやセフタジジムで治療したが効果を認めなかった.喀痰・胃液・胸水の抗酸菌塗抹・培養,ツべルクリン反応,結核菌特異的インターフェロン-γ遊離試験はいずれも陰性であったが,胸水のリンパ球比率96.2%,ADA 92.9U/Lを参考に結核性胸膜炎を強く疑った.第5病日から抗結核薬(リファンピシン,イソニアジド,エタンブトール,ピラジナミド)を開始し臨床症状,検査所見は速やかに改善した.結核性胸膜炎は放置すると肺結核に移行する可能性があり,臨床症状や胸水リンパ球比率・ADA値から治療開始を検討する必要がある.
Key words | 結核, 片側性胸水, 胸水ADA値 |
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連絡先 | 田浦喜裕 〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465 京都府立医科大学附属病院 |
受付日 | 2019年10月31日 |
受理日 | 2020年6月25日 |
小児感染免疫 32 (3):234─241,2020
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