機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─原著─

Epstein-Barrウイルスとサイトメガロウイルス感染に合併する顔面神経麻痺の臨床的特徴~過去の症例報告の文献研究~

横山 忠史1), 竹村 悠太1), 小泉 瑛子1), 神川 愛純1), 山宮 麻里1), 小幡 美智1), 宮下 健悟1), 井上 巳香1), 酒詰 忍1), 太田 和秀1)

1)独立行政法人国立病院機構金沢医療センター小児科


Epstein-Barrウイルス(EBV)とサイトメガロウイルス(CMV)は伝染性単核症(IM)の原因ウイルスである.IMでは,比較的稀なものの,顔面神経麻痺を合併することが知られている.しかし,顔面神経麻痺の発症にこれらのウイルスがどのようにかかわっているかについては,詳しくわかっていない.
今回,我々はEBVとCMV感染に起因する顔面神経麻痺の臨床的特徴を明らかにするために,本邦における過去の報告を集計解析し,文献研究を行った.EBVが原因で,かつ中耳炎を認める顔面神経麻痺では,乳幼児に多く,IMを高頻度に併発しており,麻痺は片側性で,先行症状から発症までに要する期間は1~2日であった.一方,EBVが原因で,顔面神経麻痺以外の神経症状を合併している場合は,成人に多く,IMを併発している頻度が少なく,麻痺は両側性で,先行症状から顔面神経麻痺発症までに1~2週を要していた.CMVが原因の場合は,その多くがギラン・バレー症候群の一症状として顔面神経麻痺を認めていた.
我々の検討から,EBVとCMV感染に合併する顔面神経麻痺は,原因ウイルスの違い,年齢,IMの存在,中耳炎や随伴する他の神経症状によって,その臨床像が異なっていることが明らかになった.

Key words 顔面神経麻痺, EBウイルス, サイトメガロウイルス, 伝染性単核症, 中耳炎
連絡先 横山忠史 〒920-8650 金沢市下石引町1-1 金沢医療センター小児科
受付日 2020年1月23日
受理日 2020年6月13日

小児感染免疫 32 (3):187─194,2020

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