─症例報告─
右腋窩リンパ節膿瘍に環軸椎回旋位固定を併発した1例
髙橋 健一郎1), 髙橋 侑利1), 志田 洋子1), 安田 菜穂子1), 鈴木 葉子1,2), 杉原 茂孝1)
1)東京女子医科大学東医療センター小児科 2)和洋女子大学家政学部健康栄養学科
腋窩リンパ節膿瘍から環軸椎回旋位固定(AARF)を併発し,牽引治療まで要するまれな病態を経験したため報告する.症例は生来健康な7歳女児.発熱と右腋窩痛,頸部痛を主訴に第8病日に当院を受診した.胸部造影MRIで右腋窩リンパ節膿瘍と診断し,同日精査加療のため入院とした.斜頸もみられ整形外科対診し,頸椎X線写真で明らかな脱臼は認めなかった.局所麻酔下での排膿は困難であり,Ceftriaxone点滴静注で加療を開始した.数日で解熱し,膿瘍の縮小を認めた.抗菌薬は膿瘍消失を確認し,計3週間投与して終了した.膿瘍が改善しても斜頸が残存していたため第15病日に頸部CTを施行した.AARFと診断し,Glisson牽引で治癒した.各種培養で有意な病原体発育は認めなかったが,第19病日の抗ストレプトリジン-O抗体が1,500 IU/mL以上と著明な高値を認め,溶血性レンサ球菌の関与が強く疑われた.
腋窩リンパ節膿瘍のように穿刺が困難な症例での血清抗体価の有用性と,速やかにAARFを診断・治療を開始することの重要性が示唆された.
Key words | 腋窩リンパ節膿瘍, 環軸椎回旋位固定, 溶血性レンサ球菌 |
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連絡先 | 髙橋健一郎 〒116-8567 東京都荒川区西尾久2-1-10 東京女子医科大学東医療センター小児科 |
受付日 | 2019年12月10日 |
受理日 | 2020年3月5日 |
小児感染免疫 32 (2):134─140,2020
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