機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

治療抵抗性パスツレラ感染症から原発性線毛機能不全症が判明した1例

大槻 早紀1), 渡邊 嘉章2), 本村 秀樹2), 森内 浩幸3)

1)国立病院機構長崎医療センター初期研修医 2)同 小児科 3)長崎大学病院小児科


パスツレラ感染症は高齢者,新生児,または肺疾患,免疫不全状態などの基礎疾患を有する人が,保有動物と接触することで発症することが多い.また,原発性線毛機能不全症(PCD)は線毛運動障害のため気道浄化能が低下し,感染を反復するうちに若年で気管支拡張症を発症することがある.今回,治療抵抗性パスツレラ感染をきっかけにPCDという基礎疾患を診断できた症例を経験した.症例は13歳男子,過去4回肺炎の入院歴がある.発熱、咳嗽があり肺炎と診断され入院となった.喀痰培養からPasteurella multocidaが検出されたが,動物との濃厚接触歴はなかった.Minocyclineの点滴投与後にamoxicillin(AMPC)の内服に変更して退院した.その後,胸部CTで気管支拡張症と診断された.退院後も発熱,咳嗽を繰り返し,喀痰培養でP. multocidaがその都度陽性となり,パスツレラ感染症の再燃と考えた.基礎疾患の精査により,PCDと診断した.菌の薬剤感受性検査では耐性菌への変化はなく,AMPCの高用量(1500mg/日)投与と肺理学療法を開始してからは再発なく経過している.本症例のように感染経路不明で治療抵抗性パスツレラ感染症を発症する小児の場合には,呼吸器疾患やPCDを含めた全身の基礎疾患の検索を行うことが必要である.

Key words パスツレラ, 原発性線毛機能不全症, 気管支拡張症
連絡先 大槻早紀 〒856-8562 大村市久原2丁目1001-1 国立病院機構長崎医療センター
受付日 2019年9月10日
受理日 2020年1月23日

小児感染免疫 32 (2):115─121,2020

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