─症例報告─
急性胃腸炎が重症化し死亡した小児例におけるノロウイルス・ロタウイルスの共検出
林 優佳1), 白神 一博1), 高梨 さやか2), 星野 愛2), 犬塚 亮1), 岡 明1)
1)東京大学医学部附属病院小児科 2)同 大学院医学系研究科発達医科学
ノロウイルスは急性胃腸炎の主要な原因であり,ロタウイルスワクチンを定期接種化した諸外国では胃腸炎罹患児に占めるノロウイルス感染症の割合が増加している.ノロウイルスによる消化器症状は数日で収束するが,稀にけいれんや意識障害など重篤な症状を呈することがある.今回ノロウイルスとロタウイルスが共検出され,急性胃腸炎を契機に死亡に至った症例を報告する.症例は合併症のないダウン症候群の1歳男児で,嘔吐・下痢・意識障害を主訴に来院した.循環血液量減少性ショックに対し集学的治療を行い呼吸・循環動態は安定したものの,DIC・急性脳症を合併し入院5日目に死亡した.便検体のRT-PCRでノロウイルスとロタウイルスが共検出され,ノロウイルスの方がより病態に寄与したと考えられた.理由は,ノロウイルスの方がより遺伝子量が多いと推定されたこと,ロタウイルス感染症は接種済みのワクチンにより重症化が抑制された可能性があることである.
ノロウイルス感染症は重篤な経過を辿り死亡に至ることがあるが,特異的な治療法が存在しない.ノロウイルスワクチンの臨床試験が進行中であり早期の実用化が望まれる.
Key words | ノロウイルス, ロタウイルス, 共検出, ワクチン, 死亡例 |
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連絡先 | 白神一博 〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学医学部小児科 |
受付日 | 2019年9月19日 |
受理日 | 2020年1月6日 |
小児感染免疫 32 (1):45─51,2020
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