─症例報告─
副腎クリーゼで発症し繰り返した血液培養でサルモネラ感染症と診断した下垂体機能低下症の1例
石見 壮史1), 山本 威久1), 新田 統昭1), 東 純史1), 溝口 好美1), 下辻 常介1)
1)箕面市立病院小児科
2歳で中枢性副腎皮質機能低下症と診断されステロイド補充療法中の患者が急性副腎皮質機能不全(副腎クリーゼ)を発症し,方法を変更して再提出した血液培養でサルモネラ感染症と診断できた症例を経験した.
症例は21歳の男性.発熱,嘔気,水様性下痢便を主訴として当院を受診した.当院受診時には低血糖,低血圧を呈し臨床症状から副腎クリーゼと診断した.
ヒドロコルチゾンの静注による治療を開始したが,顔色不良,低血圧が遷延するためヒドロコルチゾンを内服製剤に変更するまでに時間を要した.さらに来院時の血液,便培養はともに有意な菌の検出はなかったが,第8病日の血液培養で血液採取量,ボトルの提出本数を増やすことによりサルモネラ属菌を同定できた.その後抗菌薬治療により回復し第22病日に退院した.
基礎疾患として中枢性副腎皮質機能低下症のある症例が消化管感染症により副腎クリーゼを発症した場合は初期対応が重要で,本人の全身状態の注意深い観察とともに,適切な血液培養検査の実施,菌血症を念頭に置いた初期抗菌薬の早期投与が大切である.
Key words | 下垂体前葉機能低下症, 血液培養検査, 副腎クリーゼ, サルモネラ感染症 |
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連絡先 | 山本威久 〒562-0014 箕面市萱野5-7-1 箕面市立病院小児科 |
受付日 | 2018年8月21日 |
受理日 | 2019年10月1日 |
小児感染免疫 32 (1):27─32,2020
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