─原著─
小児咽後膿瘍の臨床的特徴
塚本 淳也1), 宇田 和宏2,3), 矢野 瑞季1), 荒木 孝太郎2,3), 福岡 かほる2,3), 松島 崇浩1), 鈴木 知子1), 榊原 裕史1), 幡谷 浩史1), 堀越 裕歩2,3)
1)東京都立小児総合医療センター総合診療科 2)同 感染症科 3)同 免疫科
咽後膿瘍は5歳未満の小児に多く,臨床症状として嚥下困難,頸部可動域制限,開口障害などの症状が知られている.しかし,発熱期間,症状の頻度,治療内容などについて詳細に検討した本邦小児での報告は少ないのが現状である.2010年3月から2019年3月の間に当院での咽後膿瘍(咽後蜂巣炎を含む)の症例を対象とし調査を行った.年齢,性別,臨床症状,治療内容について検討した.疾患定義を満たした咽後膿瘍は27例,咽後蜂巣炎は6例であった.年齢の中央値は3歳4か月で,5歳以上が12例(36%)であり,性別は男児が25例(76%)であった.発熱は32例(97%)に認め,発熱から診断までの期間は3日以内が15例(45%)であった.臨床徴候の出現率は,頸部腫脹79%,頸部可動域制限42%,いびき30%,流涎15%で,上記4つの項目のいずれかを認めたものは97%であった.29例(88%)の症例に初期治療としてアンピシリン/スルバクタムが使用され,外科的介入は16例(49%)でなされていた.検討の結果,発熱3日以内の症例,好発年齢外の症例が少なからずあり,診断は容易ではないが,頸部腫脹,頸部可動域制限,いびき,流涎などの症状に着目した診療が重要であることが示唆された.
Key words | 咽後膿瘍, 深頸部膿瘍, 小児 |
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連絡先 | 塚本淳也 〒183-8561 府中市武蔵台2-8-29 東京都立小児総合医療センター総合診療科 |
受付日 | 2019年9月26日 |
受理日 | 2020年1月6日 |
小児感染免疫 32 (1):19─26,2020
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