機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第32巻第1号目次 > 抄録

─原著─

2013~2014年度に小児から分離されたMoraxella catarrhalisの抗菌薬感受性―過去2回の調査成績と比較して―

鬼頭 周大1), 尾崎 隆男1), 長谷川 眞子1), 赤野 琢也1), 吉兼 綾美1), 高尾 洋輝1), 福田 悠人1), 野口 智靖1), 後藤 研誠1), 竹本 康二1), 西村 直子1)

1)江南厚生病院こども医療センター


2013年4月~2015年3月の2年間に,当院小児科を受診した気道感染症患児75例(日齢25~13.1歳)から分離されたMoraxella catarrhalis 75株について,β-ラクタマーゼ試験を施行し,13種類の抗菌薬に対するMICを測定した.M. catarrhaliが分離された患児の年齢は1歳未満および1歳が共に21例と最も多く,4歳未満で80%を占めた.反復分離例はなく,12例(16%)は他の病原細菌との複数菌分離であった.
2000年と2006年に行った過去2回の調査成績と同じく,75株全てがβ-ラクタマーゼ産生菌であった.CLSIの基準でIとRを示したものを耐性としたとき,CVA/AMPC,LVFXに耐性の株はなく,CLDMには99%の株が耐性であった.13種抗菌薬のMIC50/MIC90(μg/mL)は,ABPC 4/16,CVA/AMPC 0.25/0.25,CCL 1/4,CPDX 1/2,CDTR 0.5/1,CFDN 0.25/0.5,CFTM 1/2,EM 0.25/0.5,CAM ≦0.12/0.5,AZM ≦0.12/≦0.12,MINO ≦0.12/0.25,CLDM 4/8,LVFX ≦0.12/≦0.12であり,過去2回の成績とほぼ一致していた.ただし,2株(3%)において,EM,CAMおよびAZMに対して高いMIC値(>16μg/mL)の耐性が認められた.この様なマクロライド系抗菌薬に高度耐性の株を過去2回の調査では認めていないことから,抗菌薬感受性の今後の動向に注意が必要である.

Key words Moraxella catarrhalis, 抗菌薬感受性, β-ラクタマーゼ, マクロライド系抗菌薬耐性
連絡先 西村直子 〒483-8704 江南市高屋町大松原137番地 江南厚生病院こども医療センター
受付日 2019年6月13日
受理日 2019年11月21日

小児感染免疫 32 (1):11─18,2020

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