機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第31巻第3号目次 > 抄録

─症例報告─

SEA産生メチシリン感受性黄色ブドウ球菌によるprobable toxic shock syndromeの1例

浅妻 正道1,2), 大内 一孝1,3), 松村 うつき1), 田浦 喜裕1,4), 森田 高史1), 小田部 修1), 伊藤 陽里1), 藤田 直久5)

1)京都中部総合医療センター小児科 2)松下記念病院小児科 3)綾部市立病院小児科 4)京都府立医科大学小児科学教室 5)京都府立医科大学感染制御・検査医学教室


毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome;TSS)は,グラム陽性球菌が産生するスーパー抗原がサイトカインを誘導するために発症し,ショックに至る重篤な疾患である.診断に必要な基準を満たさない非典型例は,probable TSSに分類される.9歳男児が,右季肋部に皮下硬結を自覚した1週間後に発熱と全身性発疹を呈し,当院を受診した. 右季肋部の皮下硬結内に膿瘍を同定し,治療開始前の穿刺膿汁培養でブドウ球菌を疑うグラム陽性球菌を検出した.のちにメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus;MSSA)と判明した.細菌学的検討でスーパー抗原の一つであるSEAを産生する株であることが判明し,MSSAの軟部組織感染に惹起されたprobable TSSと診断した.SEA産生のMSSAの市中感染からも,probable TSSの発症に留意する必要があることを示唆する症例として報告する.

Key words メチシリン感受性黄色ブドウ球菌, 毒素性ショック症候群, スーパー抗原
連絡先 浅妻正道 〒570-8540 守口市外島町5-55 パナソニック健康保険組合松下記念病院
受付日 2018年9月27日
受理日 2019年6月11日

小児感染免疫 31 (3):287─292,2019

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