機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

母体の除菌後にも関わらずChlamydia trachomatis肺炎を発症した1か月女児例

日馬 由貴1), 秋山 直枝1,2)

1)富士市立中央病院小児科 2)東京慈恵会医科大学小児科学講座


妊娠中に母体が適切に除菌されたにも関わらず,Chlamydia trachomatisによる肺炎を発症した生後1か月の女児例を経験した.児は呼吸窮迫と軽度の低酸素血症を認め,当科を受診した.胸部X線検査で肺野に浸潤影を認め,血液検査では軽度の炎症反応上昇を認めた.母親が妊娠22週にクラミジア抗原検査で陽性となった既往があり,アジスロマイシンによる治療を行ったこと,児がクラミジア肺炎として典型的な症状であったことからクラミジア肺炎を疑いエリスロマイシン内服で治療したところ,症状は速やかに改善した.児の咽頭ぬぐい液で行ったクラミジアのpolymerase chain reaction(PCR)検査が陽性であり,クラミジア肺炎と最終診断した.父親,母親にもクラミジアのPCR検査を行ったところ,両者の陽性が確認されたため,産婦人科でアジスロマイシンによる治療が行われた.母親は妊娠期間中に除菌されていたが父親の除菌がされておらず,原因は父親からのいわゆるピンポン感染であったと推測されたことから,性感染症におけるパートナー治療徹底の重要性が示唆された.さらに,周産期チームを通したハイリスク母体におけるクラミジア管理の見直しや,性感染症に関して学ぶ機会の少ない中高校生に向けた性感染症の啓発の必要性が示唆された.

Key words 母子感染, 性感染症, クラミジア, 肺炎
連絡先 日馬由貴 〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1 国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター
受付日 2019年2月7日
受理日 2019年5月17日

小児感染免疫 31 (3):281─286,2019

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