機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

血清学的検査で腸管出血性大腸菌O121感染を診断し得た溶血性尿毒症症候群の1例

小笠原 聡1), 小林 靖子1), 池内 由果1), 吉澤 千景1), 武井 麻里子1), 滝沢 琢己1), 大西 真2), 荒川 浩一1)

1)群馬大学医学部附属病院小児科 2)国立感染症研究所細菌第一部


腸管出血性大腸菌(EHEC)感染による溶血性尿毒症症候群(HUS)は日本人小児に発症した血栓性微小血管症(TMA)の64%を占める.EHEC感染によるHUSはEHECの分離・同定,ベロ毒素の検出または血清中抗O抗原抗体の検出によって診断する.EHEC感染の診断ができない場合,小児TMAの16%を占める非典型HUSとの鑑別がつかず治療選択に苦慮する.
症例は2歳男児.2週間下痢が持続した後にHUSを発症し入院した.保存的治療を開始したが十分な利尿を得られず,代謝性アシドーシスと高カリウム血症が増悪したため血液透析を導入した.入院4日目には乏尿を脱し,12日目に退院した.家族歴からEHECによるHUSを疑ったが便培養で起因菌を検出せず,O157LPS抗体も陰性であり,非典型HUSや他のEHEC感染の鑑別のため大腸菌O抗原凝集抗体検査を行った.入院時と退院時の血清でO121抗体が陽性でありO121感染によるHUSと診断し得た.
HUSを発症するO157以外のEHEC感染を診断することは重要であり,便培養でEHECを検出できない場合,患者血清を用いた大腸菌O抗原凝集抗体検査は有用な検査である.

Key words 溶血性尿毒症症候群, 腸管出血性大腸菌感染, O121, 大腸菌O抗原凝集抗体検査
連絡先 小林靖子 〒371-8511 前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部附属病院小児科
受付日 2018年12月20日
受理日 2019年4月23日

小児感染免疫 31 (3):275─280,2019

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