─症例報告─
新生児期の反復性遅発型GBS菌血症の原因として経母乳感染が示唆された1例
吉田 未識1), 阿部 克昭1), 竹内 典子2), 石和田 稔彦2)
1)千葉市立海浜病院小児科 2)千葉大学真菌医学研究センター感染症制御分野
症例は新生児期に2度の遅発型B群溶連菌(Streptococcus agalactiae, Group B Streptococcus;GBS)菌血症を発症した女児.免疫学的素因のない正期産児であった.母体の産前GBSスクリーニングは陰性で,乳腺炎症状もなかったが,経過より経母乳感染が否定できないと考え,母乳培養を行った.児血液および母乳より発育したGBSの解析を行ったところ,血清型およびMLST(multi locus sequence typing)による遺伝子型が完全に一致した.経母乳感染の場合,通常の遅発型感染症よりも再発が多いことが知られているが,加えて本症例の血清型はⅢ型,遺伝子型はST17で,ともに高い再発率や侵襲性との関与が指摘されている血清型,遺伝子型であったことから,それも感染を繰り返した一因となったと考えている.
本症例では,母乳栄養の中止と菌血症として通常の抗菌薬投与を行い,後遺症なく治癒し,再発もなく経過しているが,母体への抗菌薬投与を含めた発症時対応の標準化や,感染予防としての母体向けワクチンの導入など,今後の課題は多く,類似症例の蓄積が必須である.
Key words | 遅発型B群溶連菌感染症, 再発, 経母乳感染, multi locus sequence typing |
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連絡先 | 吉田未識 〒272-0103 市川市本行徳5525-2 行徳総合病院小児科 |
受付日 | 2018年11月22日 |
受理日 | 2019年2月26日 |
小児感染免疫 31 (2):163─168,2019
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