機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第31巻第2号目次 > 抄録

─症例報告─

愛玩犬を感染源としたサルモネラ菌血症の乳児例

山木 ゆかり1,2), 佐々木 吉明1), 梶野 浩樹1)

1)JA北海道厚生連網走厚生病院小児科 2)JA北海道厚生連旭川厚生病院小児科


非チフス性サルモネラ属菌(non-typhoidal Salmonella)(以下,サルモネラ菌)感染症は細菌性腸炎を発症することが多いが,菌血症を発症する症例もある.また,鳥類や爬虫類に加えて哺乳類も保菌することが知られているが,過去国内で菌のタイピングを行ってイヌが感染源と同定されたのは乳児の腸炎例の一報告のみである.今回,愛玩犬を感染源としたサルモネラ菌血症の乳児例を経験した.症例は6か月男児.発熱と哺乳量低下を認め精査加療目的で当科に入院した.入院翌日に入院時の血液培養からグラム陰性桿菌の菌血症と判明し,抗菌薬投与で速やかに解熱した.後日,血液培養からはサルモネラ菌が同定された.患児の便培養及び髄液培養や家族の便培養からサルモネラ菌は検出されなかったが,同居する愛玩犬の便培養からサルモネラ菌が検出され,患児の血液培養から検出された菌と血清型(13:d:e,n,z15)が一致し,パルスフィールドゲル電気泳動法における遺伝子の一致率が88%であったため感染源であると推定された.サルモネラ菌血症の感染源の同定をする際にはイヌが感染源である可能性を考慮する必要がある.

Key words 菌血症, 非チフス性サルモネラ菌, 愛玩犬, ワンヘルス・アプローチ
連絡先 山木ゆかり 〒078-8211 北海道旭川市1条通24丁目111 JA北海道厚生連旭川厚生病院小児科
受付日 2018年5月7日
受理日 2019年1月6日

小児感染免疫 31 (2):125─129,2019

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