機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

髄膜炎症状が先行した,帯状疱疹に伴う髄膜炎の1例及び健常小児における帯状疱疹に伴う髄膜炎に関する文献的検討

北島 直子1), 島内 彩1)*, 伊藤 嘉規2), 木村 宏3)

1)遠賀中間医師会おんが病院小児科(現:羽生総合病院小児科), 2)名古屋大学大学院医学部小児科学, 3)名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学


症例は生来健康な,水痘既往のある14歳男児.頭痛と吐き気,微熱を主訴に当院を紹介受診し無菌性髄膜炎の診断で第4病日に入院となった.その後第7病日より皮疹が出現し帯状疱疹に関連した髄膜炎と臨床診断,アシクロビルの経静脈投与により症状は劇的に改善した.髄液及び水疱基底部擦過検体よりVaricella-zoster(VZV)DNAを検出し確定診断に至った.
併せて,本邦での健常小児における帯状疱疹に伴う髄膜炎の症例報告22例を検討したところ,症例は10歳代前半の男児に集積しており,本例と同様に髄膜炎症状が皮疹に先行した症例が14例(64%)と過半数を占めていた.これまでも,VZV関連の神経系疾患には必ずしも皮疹を伴わないことがあると報告されている.水痘既往のある症例では,無菌性髄膜炎の原因の一つとしてVZVを想定する必要性があると思われた.
現状では小児における帯状疱疹に伴う髄膜炎は非常に稀な疾患であるが,水痘ワクチンの定期接種化により今後本邦でもVZV感染症の疫学が変化する可能性が高く,帯状疱疹症例が増加することも危惧されている.髄膜炎を含めたVZV関連疾患における,積極的なウイルス学的診断と前方視的な症例集積に基づく疫学調査の重要性は,今後増すものと思われる.

Key words 水痘帯状疱疹ウイルス(VZV), 帯状疱疹, 髄膜炎, アシクロビル(ACV)
連絡先 北島直子 〒811-4342 福岡県遠賀郡遠賀町大字尾崎1725番地2 遠賀中間医師会おんが病院小児科
受付日 2018年7月9日
受理日 2018年12月20日

小児感染免疫 31 (1):47─54,2019

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