機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

下肢壊死性筋膜炎の発見が遅れ救命し得なかった劇症型溶血性連鎖球菌感染症の4歳女児例

山崎 大輔1,2), 田崎 優子1,3), 宮下 健悟1), 井上 巳香1), 酒詰 忍1), 太田 和秀1)

1)独立行政法人国立病院機構金沢医療センター 小児科 2)金沢大学医学部附属病院小児科 3)静岡県立こども病院腎臓内科


劇症型溶血性連鎖球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome: STSS)は,極めて致死率の高い感染症である.今回われわれは,10日前から下肢痛の訴えがあったにもかかわらず,発赤・腫脹などの外観上の異常所見を認めなかったために発見が遅れ,下肢の壊死性筋膜炎からSTSSを発症し,救命し得なかった小児例を経験した.症例は4歳女児.10日前から左下肢痛を訴えていた.何度か近医の整形外科医院や小児科医院を受診していたが,3日前から歩けない状態となり,搬送当日の夕方から急激に全身状態が悪化し当院に救急搬送となった.病院到着時には,すでに心肺停止の状態であり蘇生を試みたが,救命し得なかった.剖検時でさえ,左下肢に発赤・腫脹を認めなかった.後日,複数の無菌部位からStreptococcus pyogenesが検出された.臨床経過と剖検所見から,下肢の壊死性筋膜炎を契機に敗血症とDICを生じ,warm shockにより急激に心筋虚血を生じ死亡したものと診断した.本症例のように,壊死性筋膜炎を認めていても,外観上は全く正常なことがあるため,注意を要するとともに,より丁寧な診察が必要と思われた.

Key words A群β溶連菌, 劇症型溶血性連鎖球菌感染症, 壊死性筋膜炎, 急性心筋梗塞
連絡先 山崎大輔 〒920-8641 金沢市宝町13-1 金沢大学医学部附属病院小児科
受付日 2018年7月24日
受理日 2018年11月6日

小児感染免疫 31 (1):41─46,2019

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